岸田政権“コンパクト国葬”アピールは逆効果 16.6億円ようやく公表も過少試算すぐバレバレ

「16億円も本当にファイナルアンサーとは思わない」──。立憲民主党の安住国対委員長は6日、そう語った。

世論に押されてようやく安倍元首相の国葬に要する概算費用が示された。既に決定している会場の借り上げや設営の費用約2.5億円と合わせ、総額16.6億円だ。190以上の海外代表団が参列し、その中で特に接遇を要する代表団を50程度と仮定し、警備に8億円程度、外国要人の接遇に6億円程度などを見込む。

説明資料には金額部分に「※上記の仮定が前提」とわざわざ記され、“増額”に含みを持たせている。実際、さらに増える可能性が高い。積算根拠が曖昧だからだ。

6日の野党合同ヒアリングに出席した内閣府、警察庁、外務省の担当者は「あくまで仮定」を連発。野党議員から積算根拠を突っ込まれるとボロが出た。道府県警察からの派遣の旅費や超過勤務手当を5億円程度と見込んでいるが、派遣に伴い道府県警で発生する穴埋めの経費については「含まれていない」(警察庁)。

交通規制の費用は含むとしたが、首都高封鎖に要する費用は「承知していない」(同)……。この調子では計上されていない費用はまだまだ眠っているはずだ。

2019年の天皇代替わりの儀式では、警備費に約38億円、「即位の礼」の接遇などに50億円が計上された。来年5月の広島サミット関連経費は、外務省が約197億円、警察庁が約127億円の概算要求をしている。規模や内容が違うとはいえ国葬の16億円はあまりに少ない。野党は他のイベントとの比較も追及する方針だ。

「国葬の開催に批判が強まる中、費用を少なく見せ、“コンパクト国葬”をアピールしようとしたのでしょう。実際には、数倍の経費がかかっても、実施してしまえば“後の祭り”と踏んでるのではないか。しかし、根拠が乏しい“過少試算”であることはすぐにバレるはず。国葬反対の世論はさらに高まると思います」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

8日にも開催される閉会中審査で、野党は国葬や旧統一教会問題で攻勢を強める。「首相は従来通りの答弁を繰り返す」(官邸関係者)とみられ、防戦一方になりそうだ。

岸田首相は6日の党役員会で国葬について「説明責任をしっかり果たしたい」と語ったが、役員会を終えた萩生田政調会長や高木国対委員長は憮然とした暗い表情だった。逆風はやみそうにない。

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